
イヌワシはおもに北半球の山岳地帯や開けた草原地帯に生息する大型の猛禽類です。日本でも北海道から九州の山岳地帯に生息していることが知られていますが、その生息状況は危機的状況に置かれています。
当サイトでは、イヌワシの生態とその現状、そして彼らを見守り続ける日本イヌワシ研究会の活動について紹介しています。
巻頭トピック:「立山黒部」世界ブランド化推進に対する意見書
巻頭トピック:「(仮称)余呉南越前ウィンドファーム発電事業に係る計画段階環境配慮書」 に対する意見書
巻頭トピック:滋賀県米原市および岐阜県不破郡関ヶ原町で計画中の米原風力発電の建設事業の中止を求めます
巻頭トピック:銀河(1)及び(2)ウインドファーム建設事業の中止を求めます
巻頭トピック:宮古岩泉風力発電事業(仮称)の見直しを求めます
日本イヌワシ研究会は、1981年の発足以来、我が国で絶滅危惧種となっているイヌワシを対象とする研究と全国規模での生息環境の保護に取り組んでいます。
その中で、現在の岩手県における複数の風力発電事業が、特に消失が著しい絶滅危惧種であるイヌワシの生息環境に決定的な打撃を与える恐れがあり、中でも(株)グリー ンパワーインベストメントが計画中の「宮古岩泉風力発電事業(仮称)」を筆頭に、抜本的な見直しの必要があると考えています。
日本全体のイヌワシの生息状況を俯瞰した場合、当該事業が計画されている北上高地はイヌワシ繁殖ペアの生息密度が特に高く、国内に残された最後の重要な生息地の一つです。その北上高地に同時多発的に風力発電事業計画が進められていることは、日本全体のイヌワシの存続の危機に直結すると考えられます。
宮古岩泉風力発電事業以外にも、釜石広域風力発電事業拡張計画、住田ウィンドファーム事業、住田遠野風力発電事業、葛巻ウィンドファームプロジェクトがあり、いずれもその一事業によって、複数のイヌワシ繁殖ペアが影響を受けること、調査と評価に不備があること等から、再検討が必要 な案件であり、中でも最も再検討を急がねばならないのは宮古岩泉風力発電事業です。
当会では、2016年11月3日〜6日の4 日間に、のべ 52人の調査員によって宮古岩泉風力発電事業の計画地に生息する複数ペアのイヌワシについて、行動追跡調査を実施しました。その結果、牧野の広がる西側部分のみだけでなく、主に森林である東側部分においてもイヌワシの重要な狩場であることを確認しました。
長期間の大規模な影響評価調査で確認されなかったとされたことが、当会のわずか4日間の調査によって確認されています。このことだけをとっても、事業者の調査と評価には、大きな不備があると考えられます。
また、環境影響評価では、「バードストライク」といわれる衝突事故の評価として「衝突確率」という概念が使用されています。が、過去に「衝突確率が極めて低い」と評価された岩手県内の先行事例である釜石広域風力発電事業において、建設からわずか3年半程度の2008年にイヌワシの衝突死が発生(※1)したことからも、絶対的な評価基準として使うことは全く不適切であることは既に証明されています。
以上の事柄により、該当機関に対し意見書(※2)を提出いたしました。 詳しくは意見書をご覧ください。
巻頭トピック:つがい数の減少と繁殖成功率低下の33年間の推移
イヌワシは日本の森林生態系の頂点に立つ大型猛禽類で、種の保存法により国内希少野生動植物種に指定され、環境省レッドデータブックに絶滅危惧ⅠB類(EN)として記載されている希少種です。本種の絶滅回避に向けた適切な保護のためには、全国のイヌワシの生息数と繁殖成功率を知ることが極めて重要です。
日本イヌワシ研究会(以下、研究会)は、1981年の創立時より、研究会の基幹事業として「全国イヌワシ生息・繁殖状況調査」を続け、日本のイヌワシの生息状況をモニタリングしています。モニタリング結果は 5 年ごとに研究会発行の機関誌「Aquila chrysaetos」に公表しており、これらの成果は日本のイヌワシの保護施策の立案と実施に役立てられてきました。
以下のグラフは、1981年から2010年までの結果(Aquila chrysaetos No.25, 2014にて発表済み)に2011~2013年までの最新情報を加え、過去33年間の日本のイヌワシの生息つがい数と繁殖成功率の変化をまとめた最新のものであり、その推移からイヌワシの置かれた現在の危機的状況を読み取ることができます。