宮城県の南三陸町は2011年の東日本大震災で壊滅的な被害を受け、現在復興まっただ中です。
南三陸町は被害が特に甚大であった漁業の町でしたが、そんな被災地域の資源の中で被害を最小限で免れたのが、昔から連綿と受け継がれてきた南三陸杉を中心した森林です。
三陸の豊饒の海を維持してきたのは森である点に早くから気付いていた南三陸の人々は、同時に水源となる沿岸部の山の森林施業にも力を入れてきました。
江戸時代から同地の杉は建築用資材として需要がありましたが、地元からの復興支援の一環として、環境に配慮した持続的な木材供給や、南三陸杉の付加価値向上を目指し、それらの活動全般の情報発信ポータルとして、「南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト(旧山さ、ございん)」を実施しています。
ご存知の通り日本のイヌワシと林業とは切っても切れない関係となっています。
イヌワシは翼開長が2m近くあり、クマタカのようにうっぺいした森林区間を利用することをあまり得意としていません。森林限界を擁する高標高地や、雪崩等による崩落地が多く見られる多雪地帯を除けば、湿潤な気候がもたらす植物の繁茂する環境というのは、イヌワシにとって好ましくない環境と言えます。
燃料としての炭、薪、萱、そして木材として利用すべく人の手によって手入れが行われ、定期的に開けた伐開地が出現する森林環境は、イヌワシにとって理想的な狩場となります。
イヌワシを守るということはその生息地を保全することと同義であり、山や森を人が適度に利用することこそ、遠回りのように見え実は一番確かなことではないかと、当会では考えています。
今回ご紹介した「南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト(旧山さ、ございん)」の活動のひとつに、「自然と暮らしの物語」の編集と発信があります。南三陸町にも以前はイヌワシが生息しており、そのイヌワシと南三陸の林業との関係性をモチーフにした絵本が紹介されています。
この絵本は、同プロジェクト実行委員会メンバーでもあり、南三陸ネイチャーセンター友の会代表でもある鈴木卓也氏原作(作画:西澤真樹子氏)になります。
戦前、そして高度経済成長期から現在に至るまでの日本の山の現状が、短い文章の中に適切にまとめられていて、南三陸という特定の地域が舞台とはいえ、その実、日本全国のイヌワシとその生息地で起きている問題がよく浮き彫りになっていますので、是非ご覧いただければと思います。
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